舞囃子「吉野静」を舞いました。
この曲は稀曲と言っていい曲であまり上演機会がなく、僕も見たことがありません。
来月の名古屋での催しで出るのですが、シテが関西の方なので今回は舞う人がおらず、僕は当日地謡にもついてないので、勉強のために舞わせてもらうことになりました。
三番目にしては珍しく現在物(幽霊などが出てくるのではなく、物語の中で生きている人によって現在進行形ですすめられる形式)で、登場人物も今が旬の静御前と佐藤忠信。
これだけ見るともっと上演されてもよさそうですが、物語はなんとなくわかったようでよくわからない展開な上、謡の節がちょっと複雑(地謡も大変そうでした)、舞ってみると型や割り当てもやや不自然な感じがします。
そんな曲なので気にかけていたつもりなのですが…。
その前に「羽衣」の舞囃子があり“然るに月宮殿の有様~”なんて聞いているうち、「吉野静」も“然るに”で始まるなとか“神道を重んじ朝家を敬い”だったか“朝家を敬い神道を重んじ”だったけなぁとか、頭を駆け巡っていました。
この昼の研究会は重鎮の先生もいらっしゃって、大勢の方に見ていただけます。
「いいとこ見せなくちゃ!」という気持ちが悪いほうにいってしまったのかもしれません。
舞い始めて間もなく一句思い違いしましたが、特に崩れることなく進んでいきました。
上羽の謡で鼓が予想外の手でしたがこれも冷静に対処。
全体的には問題なく進んでいったようなものの、どことなくしっくり来ない感じでクセを終えました。
問題は序ノ舞。
序の足拍子(拍子に合わない笛のところで2回足拍子を踏みます)が大小物に慣れないせいかあまり上手くいかない感じで進み、その後初段まで早め早めの割り当てになって進んでしまいました(やはり後で師匠からご指摘がありました)。
初段ヲロシのあたりで持ち直したかと思った直後、落とし穴が。
地謡方にに進んで足拍子があるのですが、「あ、もうちょっと奥までいったほうがいいかな」と思った瞬間、何でもない足拍子を踏み間違え。
冷静になってあとミスしないようにと思ったら、直後の二段の足拍子に踏み遅れ。
…その後は持ち直し、キリは無難にいったかとは思うのですが、連続のミスというのは非常に宜しくないです。
終わったあと「表情がいつになく硬かったけど緊張してたの?」と。
たぶんそうです。
「あの一瞬(足拍子を踏み間違えたとき)別のこと考えてたでしょ」とも。
確かに。
今日のは起こるべくして起こってしまった感じ。
流れが悪い状態が続いてそこで噴出してしまったような。
でもそこで踏ん張れるか、あるいは自分の流れに引き込めるかが技量なんでしょうね。
始まる前から少し弱気になっているというのも問題。
例の「淡路」以降、ちょっと舞台が怖い感じがぬぐえない。
この前の「誓願寺」は謡い舞うのが精一杯だったのに加え、地謡がメロメロになっていたので、もう何も考えずにひたすらやっていたのですが、今回は下手に色気が出てしまったのも原因かもしれません。
それよりも最も大きいのは、たぶん稽古量の少なさ。
先週までは猛烈に忙しく、とにかく地謡やらを覚えるのが第1で自分の稽古は後回しになっていました。
3連休が終わってから、少し気が抜けたのか体調を崩し、持ち直してからもいまいち気合が入りきらない状態が続いていました。
僕はもともと気が小さく、十分な準備のないものに対しては非常に心もとなく思えてしまいます。
そのために稽古量を上げ、とにかくこれだけやったという自信をもって舞台に立ち向かっていました。
その基礎が崩れれば、うまくいかないのは自明の理です。
稽古しなくちゃ。
もっと馬鹿みたいに稽古しなくちゃ。
でも僕は意志が弱い。
催しが迫ってないとエンジンがかかりきらないかもしれない。
だからとりあえず言葉にしてみよう。
とりあえず「吉野静」リベンジとして、来週・再来週中に序ノ舞10番連続で舞う!
…別にこれをしたからって、技術的によくなるどうこうってことはないでしょう。
でも身体的・精神的にはかなり辛いはず。
時間も2時間はゆうに超えるでしょう。
なんとなく馬鹿をしたい。
むしろ今はしなくちゃいけない気がする。
実行したら、このブログで報告します。
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