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駆け出し能楽師の奮闘記
敷居が高いと思われがちな能楽の世界を、能とは関係のない家から飛び込んだ私・中村昌弘の奮闘を通じて少しでも身近に感じていただけたらと思います。

小督とか安宅とか小鍛冶とか

午前中は師匠の稽古。
「小督」を見ていただきました。
100回舞うぞ!計画を立てていたこの曲ですが、現時点で19回しか舞ってません。
ここんとこ忙しくて…。
これから舞いまくりますっ。


実家で稽古した後、夕方から国立で稽古。
まず小鼓で「安宅」
普通舞囃子でやるときは富樫が酒を持ってきた後の場面からですが、手付けにはサシからあるのでそこから見ていただきました。
この曲は上演時間が結構長いため、居グセ(舞がなく下に居るだけ)の部分は子方が出ることもあって省略されることが多い部分です。
でも省略してしまうのは勿体ないいい謡です。
内容的には、虎口を逃れた一行が主君の悲運を嘆くというもの。
後半部分の詞章は、
 
 げにや思う事叶わねばこそ浮世なれと 知れどもさすがなお
 思い返せば梓弓の 直ぐなる人は苦しみて 讒臣はいやましの世にありて
 遼遠東南の雲を起こし 西北の雪霜に責められ埋まる憂き身を
 理(ことわ)り給うべきなるに ただ世には神も仏もましまさぬかや
 怨めしの浮世や あら怨めしの浮世や


〝ただ世には~〟以降の節やカカリ具合がとっても好き。
地頭で謡うチャンスって生涯に一度くらいないかなぁ。


そのあと太鼓。
出し抜けに先生から、
「君は結婚しているの?」
と聞かれ、独身ですとお答えするとなんだか不思議そうなご様子。
「見た目老けてますけど、実は割と若いんですよ~」
と付け加えると、先生大笑い。
そういや生涯通じて実年齢より若く見られたことってないなー。
一回り上の先輩より年上だと見られたこともあったしー。


控え室に戻ると珍しいビデオがかかっていました。
昭和60年にNHKで放映された金春流の「小鍛冶」
舞台上の皆さんの若いこと!!
師匠も地謡の後列に座っていましたが、間違いなく今の僕より若い。
実力的なものももちろんだったのでしょうが、当時の金春流は本当に人が少なかったそうです。
同時に2箇所で能ができるようになったのはつい最近のことだそうで。
ひどい陰口もあって「金春流は千駄ヶ谷にいるサラリーマンを捕まえてきて前列に座らせている」とか。
その時期から比べると、今は人数的には倍近く増えました。
でも増えただけでは意味がありません。
「やるな金春流!!」
と思ってもらえるように頑張らねばなりません。
そうすることで結果的に能楽界自体がよりよい方向に向っていくチカラになればと思います。

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  1. 2006/05/24(水) 22:44:23|
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