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駆け出し能楽師の奮闘記
敷居が高いと思われがちな能楽の世界を、能とは関係のない家から飛び込んだ私・中村昌弘の奮闘を通じて少しでも身近に感じていただけたらと思います。

傘之出

囃子方主催の例会に出勤してきました。
これで今年の舞台は終了です。

金春流は「安宅」の舞囃子。
地謡のハナでした。
ごくごく短いものですが力強く謡うことを心がけました。

終わって食堂でご飯を食べてから一調「笠ノ段」を聞いていました。
「笠ノ段」とは「芦刈」の一部分で、普通に謡うのも大変なのですが、聞いていると半間半間に鼓が打たれて拍数がチンプンカンプンになりそうでした。

その後見所に行って宝生流の「邯鄲傘之出を拝見しました。
金春流にはない小書で、傘をさして幕から出てくるというものでした。
〝ひと村雨の雨宿り〟という詞章をより具体的にしたという演出です。
金春流でも「蟻通」では傘をさすのですがそれとはちょっと違う柄がすごく長い傘でした。

そのほかわかる範囲では楽が盤渉になり、ちょっとあってからイロエが入って橋掛り二ノ松付近でシテが謡い出すという変化がありました。

でもいちばんびっくりしたのが最後。
謡が終わるころになるとアイが後見から傘を受け取って開きだしたので、ははぁこれでさっと橋掛り歩きながら受け取ってかえるのだなと思いきや、謡も囃子も完全に終わったあとにアイのセリフが。
二言三言「もうお発ちですか」というようなのがあって傘を渡すというものでした。
こういう終わり方をするのは記憶にありません。
でもなんだかすごく雰囲気がよかったです。
最初と同じように傘をさすことで一炊の夢という短い時間をより強調されていたし、なんだか物語がずーっと続いていくような感じ。
小書名は傘之〝出〟ですがむしろこの帰る姿に本当の意味が込められているんだなーという印象を受けました。

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  1. 2006/12/20(水) 21:47:21|
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