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駆け出し能楽師の奮闘記
敷居が高いと思われがちな能楽の世界を、能とは関係のない家から飛び込んだ私・中村昌弘の奮闘を通じて少しでも身近に感じていただけたらと思います。

終わりました

遅くなってしまいましたが、一昨日、「熊野」を勤めさせていただきました。
ご来場いただきました皆様、有り難うございました。

「熊野」は謡の多い曲で、こうした曲は絶句しないかとか間違えないかといった恐怖がつきまとうものでしたが、今回は不思議とそういった感覚が皆無でした。
よくよく見直してみると、拍子合の謡がロンギとクセやキリのほんの数句しかなく、自分の謡いたいよう謡える部分が多かったのもあるのかもしれません。
もちろん拍子不合でも勝手に謡っていいというものではなく、むしろ気を配らねばならない箇所もありましたが、師である安福建雄先生をはじめとする囃子方の皆さんがリードして下さったおかげで、囃子の制限というようなものを全く感じることなく謡うことができました。

もちろん囃子方に限らず、諸役の皆様のお力によって能が出来上がっているのはいうまでもありません。
最近舞台を勤めながら、他の皆様へ(見所も含め)感謝の気持ちを思えることができるようになってきたのは、自分としても嬉しいことです。


今回の舞台では自分自身の今もてる全ての力を出し切れたと思います。
しかし、舞台を勤めていながら今の自分ではどうしようもない力不足を感じるところもありましたし、映像としてみたときにははっきり下手だと思える箇所が少なからずありました。

舞台が終わったその瞬間から、次への戦いが始まります。
ほっとできるのはほんの一瞬で、すぐにその舞台で見つけた課題のために稽古に移ります(昨日稽古をやりすぎたせいか違う箇所が痛い…)。
正直、とんでもないものを職業にしてしまったなとも思えますが、これほど楽しいものもありません。

苦しくて楽しい、終わりなきマラソンは続きます。

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  1. 2010/03/29(月) 22:49:31|
  2. 舞台|
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明日

いよいよ「熊野」が明日となりました。
腰・背中・ふくらはぎがパンパンだったので、昨日申し合わせの前に整体に行ってきました。
まだ張りが残っていますが、明日はきっと万全の状態になるはず。

悔いのないように勤めます!!



  1. 2010/03/26(金) 22:57:28|
  2. 舞台|
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現実逃避

明日は「砧」の地謡を勤めさせていただきます。
この曲は初めて。
量が多い上に、緩急があって相当に難しいです。

忙しい時期に初物が来るととてもきつい。
地謡の前列の端っこの一人がちょっと手を抜いても、舞台の成果にはほとんど影響を及ぼさない…かもしれません。
でも誘惑に負けたら最後。
一度ほんのちょっぴりでも手を抜いたらズルズルといってしまいます。


能楽師のほぼ誰もが危機感を持っています。
この先能楽の未来はどうなのかと。
本当に遺産になってしまうのではないかと。
〝日本の伝統芸能〟という看板があるから安心なんて思っていると、ある日それが意味を成してないということに突然気付かされるかもしれません。
看板は国が補強するのが当たり前だということも、いやむしろ(利益を生み出すという意味での)看板だと思うこと自体が甘えなのかもしれません。


「やるからには天下を取れ。そのためにはまず同世代の人間から憧れられるような存在になれ」
というのはある先生のお言葉。
とてもモチベーションが上がる反面、とっても苦しくなってしまう言葉です。
ときどき、少しだけ緩めればいろんな部分で楽になるのではないかと思ったりもします。
でも…。

なんだか最近稽古することが精神安定剤のように、逆に稽古をしないと不安が募ったりするような。
ちょっと病んでますね…(笑)
たぶんシテが迫ってきているからでしょうね~。
ここのところ更新が続いてるのも焦りからくる現実逃避かもしれません。




最近、風呂に子供を風呂に入れながら謡を口ずさんだりしています。
英才教育っていうのではなく、単にピンチだから。
育児本を立ち読みすると、ニコニコしながら楽しいお歌を歌って楽しいお風呂タイムを!なんて書いてあります。
そう考えると、「砧」ってのはちょっとよろしくないような。。。



  1. 2010/03/21(日) 23:18:54|
  2. 考えごと(能楽)|
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普及活動と稽古

今日は横浜能楽堂でバリアフリー能でした。
この催しは、イヤホンガイドや点字、手話などいろいろなツールを用いて、障がいのある方にも広く能を楽しんでいただこうという横浜能楽堂独自の公演です。
こうした催しは個人では難しく、普及活動として、舞台に立つ者にとっても本当にありがたい企画です。

最近私も色々なところで普及活動を行ったり、企画したりしていますが、それらは実際に能をご覧いただくためのステップ。
でもそれらが忙しくなって稽古が疎かになっては本末転倒です。
自分自身に厳しく戒めなくては!


「熊野」のシテはもう来週に迫ってきました。
初めて能をご覧になる方も何人も来て下さいます。
目一杯やって、観にきてよかった!と思えるよう、残り少ない日々、稽古に励みたいと思います。




  1. 2010/03/20(土) 22:47:58|
  2. 舞台|
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いろいろと

忙しい日々が続いています。
日曜日には金春会があり「山姥」のツレを勤めました。
この前勤めた長く座るツレは少し危なかったのですが、今回は足に余裕があり、終わってからワキツレにとスカウトされました(笑)
5月には「葵上」のツレがあるので、ここでもビシッと決めたいものです。

その翌日は主催講座第2弾の1回目。
今回は連続講座で、2回目は能楽堂に行きます。
2時間諸々制限がかかる部分もあり組み立てに苦労しましたが、新しい形式が出来そうです。

いろいろ自分で行動を起こそうとすると、企画書や役所向けの文書を作ったり、打ち合わせに行ったりとなかなか大変。
稽古が疎かにならないように気をつけながらも、こういうアクションも大事。
がんばらなくちゃ!



  1. 2010/03/19(金) 22:56:12|
  2. 舞台|
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訃報

流儀の大先輩である仙田理芳師がお亡くなりになりました。
若すぎる旅立ちです。


私が幼い頃からまあちゃん、まあちゃんと大変可愛がって下さいました。
小学校低学年の頃、ご社中の会理春会に「草紙洗小町」の子方に出させていただいたこともありました。

いつでも明るく、どなたにも優しく接せられる先生でした。
お通夜、告別式のときには案内係として立っておりましたが、涙ながらに本当に優しくしていただいたとお話して下さる方が何人もいらっしゃいました。

式の間はなるべく係員的な役割の方に気を向けるようにしていたのですが、喪主ご挨拶の際にはついに押さえていたものがあふれ出し、涙が止まらなくなってしまい、ご社中の方にご心配おかけしてしまいました。
手向けの謡の「融」は声に詰まり、ほとんど謡うことはできませんでした。

先生は53年もの間、能に打ち込まれたそうです。
僕はまだようやっと半分。
これから先、天国からあの子よくやってるじゃないと思っていただけるよう精進していきたいと思います。



普段家では全くといっていいほどお酒を飲みませんが、今日はお弔いにと少しだけ飲ませていただきます。

ご冥福をお祈りいたします。



  1. 2010/03/09(火) 23:51:07|
  2. 考えごと(能楽)|
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