ご来場いただきました皆様、有り難うございました。
「熊野」は謡の多い曲で、こうした曲は絶句しないかとか間違えないかといった恐怖がつきまとうものでしたが、今回は不思議とそういった感覚が皆無でした。
よくよく見直してみると、拍子合の謡がロンギとクセやキリのほんの数句しかなく、自分の謡いたいよう謡える部分が多かったのもあるのかもしれません。
もちろん拍子不合でも勝手に謡っていいというものではなく、むしろ気を配らねばならない箇所もありましたが、師である安福建雄先生をはじめとする囃子方の皆さんがリードして下さったおかげで、囃子の制限というようなものを全く感じることなく謡うことができました。
もちろん囃子方に限らず、諸役の皆様のお力によって能が出来上がっているのはいうまでもありません。
最近舞台を勤めながら、他の皆様へ(見所も含め)感謝の気持ちを思えることができるようになってきたのは、自分としても嬉しいことです。
今回の舞台では自分自身の今もてる全ての力を出し切れたと思います。
しかし、舞台を勤めていながら今の自分ではどうしようもない力不足を感じるところもありましたし、映像としてみたときにははっきり下手だと思える箇所が少なからずありました。
舞台が終わったその瞬間から、次への戦いが始まります。
ほっとできるのはほんの一瞬で、すぐにその舞台で見つけた課題のために稽古に移ります(昨日稽古をやりすぎたせいか違う箇所が痛い…)。
正直、とんでもないものを職業にしてしまったなとも思えますが、これほど楽しいものもありません。
苦しくて楽しい、終わりなきマラソンは続きます。
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