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駆け出し能楽師の奮闘記
敷居が高いと思われがちな能楽の世界を、能とは関係のない家から飛び込んだ私・中村昌弘の奮闘を通じて少しでも身近に感じていただけたらと思います。

サークル祭&西荻薪能

昨日ちょこっと予告したお弟子さん方の発表会に行ってきました。

僕は仕舞「融」を1人で地謡。
なかなか地頭をやらせていただくことないので、こういうのはいい機会。
でもお弟子さんの地謡ってすっごく緊張するんです。
だってこっちは駆け出しだろうとなんだろうとプロとして見られるので、何が起ころうと正確にきっちり謡いきらないといけないわけで。
というわけで舞台に出たときには猛烈に緊張していたわけですが、地謡座につくと風が気持ちよくて、なんだか、ほっ。
舞われた方も非常に上手にされていたので無事にいきました。

さてこの会で僕に課せられた仕事はもう1つ。
「高砂」の最後の部分〝千秋楽は~〟の謡と仕舞をいらっしゃった皆さんに体験していただきましょう!という講座の講師。
1時間弱という限られた時間の中で一気にやってしまおうというのですから、我ながら無謀な企画です。

でもこういうのって僕は割と好き。
能の舞台と違ってこうしなきゃ間違い、というのもないし(笑)
(もちろんいい加減なことは教えてませんよ~)
前にもちょっと書きましたが、大勢の人をいかに捌けるか、って言い方はなんか変ですけど、まあそういうニュアンスのものが好きなのです。
やっているうちにテンションが上がってきて楽しくなっちゃうんですよね。

さて、、、
果たして参加された皆さんのほうは楽しんでいただけたものか振りかえってみると???な部分はあるのですが、皆さん笑顔で帰っていただけたようので、今日のところはまぁよしとしましょう。


打ち上げを途中で失礼して、夜の催し先に移動。
薪能だってのにひどい雨。
でも舞台に屋根がついているので雨天決行です(お客さまは濡れてしまうわけですが…)。
しかーし、心配ありません。
金春流には超ウルトラスペシャルスーパー晴れ男がいるのです。
セミプロのおじいさまなのですが、過去にも土砂降りの雨で誰もが野外での舞台を諦めていたところ、その方が見えた途端嘘の様に大快晴に、な~んて伝説を数々残しているのです。
昨日までの予報では台風の影響を受けてどう転んでも雨という予報でしたが、今日も開演2時間ほど前からだんだん雲が切れ始めちょうどかの晴れ男が現れた途端、まるでご来光の如く陽が差し始めました。
いやー、ありがたやありがたや。

こちらの曲目は「猩々」
僕は地謡。
舞台に出ると日中の蒸し暑さから一転、少しひんやりするくらいでした。
そして強い風。
脇正面(舞台に向かって左側)付近に設置されたかがり火からときおり灰が飛んできます。
これが危険です。
野外やホールでの催しのときは音が吸われてしまうので通常よりもつい声を張りがち。
大きな声を出そうとすると必然的に大きく息を吸い込みます。
ここで注意しないと、むせ返りそうになるのを必死でこらえるという地獄のような思いをしなければなりません。
そのあたり気を遣いかつ勢いが衰えることなく謡うよう心がけました。
しっかし、そんなことをモノともせず強い地謡を謡った地頭である師匠。
僕との年齢差は17なのですが、僕は17年後ここまでの地謡を謡えるようになるのでしょうか?

ちょっと裏話。
実は舞台上の誰もが冷や汗をかく緊急事態が起こっていました。
しかしそこは皆さんさすがプロ!(って、えらい他人事のようですが)
何事もなかったかのように舞台を続けました。
たぶんお客さまには全くわからなかったのではないかと思います。

そして最後にもうひとつ。
この催しは今年で5回を数えますが、多くのボランティアのお力によって運営されています。
今日も濡れた舞台や客席を丹念に拭いて下さっていました。
風が吹けば木の葉に乗った水が一斉に落ちそれをまた拭く、という匙を投げたくなるような作業も嫌な顔もされずやって下さいました。

「能は1人では出来ない」
それは舞台内外を含んだ言葉。
舞台に立つ者はみんな、必死に準備してくださったことへの感謝の心を
持っています。
僕は微力な地謡前列の1人でしかありませんが、感謝の気持ちを持って自分の出しうる力はすべて出し切って勤めさせていただいているつもりです。

本当に有り難うございました。
来年もまたどうぞ宜しくお願いいたします。
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  1. 2006/05/20(土) 23:13:08|
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