天気が心配されましたがなんとか最後までもってくれました。
この催し、今年で25回を数えるそうです。
僕も小学生の頃「百万」の子方で出させていただきました。
今回は先日も書いたとおり「俊寛」の成経のお役をいただきました。
開演30分程前に装束を着けました。
黒風折烏帽子を被り、上は赤の入った若松の厚板に緑色の長絹、下は白大口という出で立ちです。
流人にしてはちょっと派手な格好ですが、成経ってちょっとカッコイイ男だったそうで。
母曰く、歌舞伎では若手の二枚目役者がやる役なのだとか。
僕が直面(面を掛けないこと)でやるのは申し訳ないなぁ…。
ちなみに今日はもう一番が観世流だったのですが、そちらでは素襖(っておっしゃてたかな)とずいぶん地味な格好なのだそうで。
18時半をまわり、いよいよ出番。
ここのところ役が続いていますが、何度やっても出る直前、出てからしばらくは猛烈な緊張に襲われます。
気持ちを落ち着けようと努めつつ橋掛りから舞台に入って行くと、薪の煙が目にしみます。
あんまりバチバチまばたきするわけにもいかないので困ったと思いましたが、謡い始めるともう気にはなりませんでした。
申し合わせのときに思ったとおり、しばらく曲を感じる余裕はありませんでしたが、舞台が進むにつれだんだん落ち着いて舞台を見る(って、きょろきょろするわけじゃないけど)ことができてきました。
赦免状を受け取るとき、俊寛はそれまでと打ってかわってずいぶんと興奮しているような感じを受けました。
その後成経に向かい赦免状を読むようにいいます。
このとき二言ほど成経のセリフがあるのですが、それを受けて気持ち申し合わせより高めに謡ってみました。
まだまだ感覚をそのまま表現していくことは難しいと思いますが、少しずつアタックしていかねばなりません。
終盤、赦免状に名前のあった成経と康頼の2人は俊寛を見捨てそそくさと舟に乗る場面があります。
ここはすぱっと立って、スタスタと橋掛りにある舟のほうへ行かねばなりません。
でもそれまで立膝の体勢で30分ほどじっと座っています。
申し合わせのときはぜんぜん問題なかったのですが、緊張のせいかはたまた特設舞台のせいか思ったより足がしびれていました。
始まる前楽屋で「すっ転んだらかっこ悪いな~」なんてプレッシャーをかけられていたのですが、シャレになんないかも…と一瞬ヒヤリとしました。
でもこれも普段の修行の賜物か、エイヤッと気合を入れて(もちろん声にはだしませんよ)立とうとすると上手く右足の指が爪立ってくれました。
舟に乗ってから島に残された俊寛を見て掛け合いの謡。
申し合わせではここで一箇所間違えたので注意して謡いました。
なんとか無事に謡い終え、幕へと入っていきました。
今回無事に役を勤め終えることができましたが、課題が。
康頼が師匠だったこともあったのですが、ちょっと謡がべったりとよりかかりすぎたような。
特に野外ということで声が飛んでしまい、その度合いが上がってしまったような気がします。
もうちょっとしっかりと自分の謡を謡ってもよかったのではないかなという気もしました。
終了後、装束を脱いで胴着(装束の下に着る綿入れ)姿になって片付けをしていると後見をされた先生に声をかけられました。
はじめ「ツレが…」「装束…」としか聞き取れなくて、しまった舞台でなにか失敗したかと思いましたが、
「ツレで装束を着て舞台を勤めた人間が、装束を片付けなくたっていいんだよ。人手が足らないわけじゃないんだし」
と言って下さったのでした。
ボソボソっと話されたので一瞬???と思ってしまったのですが、最後にニコッとされてようやっと飲み込めました。
僕は一番下っ端なので仕事しなくちゃ、と思ってしまうんですが、先生はそんな僕を気遣って下さったのでした。
ちょっとホロリです。
スポンサーサイト