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駆け出し能楽師の奮闘記
敷居が高いと思われがちな能楽の世界を、能とは関係のない家から飛び込んだ私・中村昌弘の奮闘を通じて少しでも身近に感じていただけたらと思います。

苦い獅子

日付が変わってしまいましたが、薪能2日目でした。
素謡「翁」のみの出演でしたが昨日の比にならないくらい疲れました…。

あいにくの雨で、早々に屋内会場での開催が決定しました。
能は「石橋 群勢が出るため、準備が大変です。
一畳台2つに紅白の牡丹の作り物を立て、山の作り物も作らねばなりません。
そこそこ人数がいたのですが、小1時間かかりました。

18時を過ぎ、「翁」の地謡。
この曲では謡う前と謡い終えた後、扇を横に置いて礼をします。
これはお客さまに向かってではなく、神様に謡を奉納させていただきますという気持ちで行います。
普段礼をして、地頭から「直れ」という声が掛かって元に直るというパターンが多いのですが、今日はそれがなくシテの動きに合わせる方式でした。
変わった点はその程度で特に問題なく終わりました。

問題はその後。
「石橋」は非番なので楽屋働き(平たく言えば裏方)になります。
先ほど作った作り物を出す役を仰せつかっていたのですが、そこで緊急事態が発生。
当初の持っていくはずのものから急に変更になりました。
他にもバタバタすることがあって、気持ちを落ち着けられないまま幕へ。
「お幕」と声を掛けて(こう言うことで幕を揚げてもらいます)出ようとしたとき、
「ドターン!」
一瞬何が起こったのか理解できませんでした。
でもその0.数秒後恐ろしい光景が目の中に飛び込んできました。
幕が倒れているのです。
特設舞台なので、木枠にぶら下げてある簡易幕だったのですが、作り物に高さがあったため引っ掛かってしまったのです。
程なくもとに戻り所定の位置に置こうとしましたが、急遽のことで正確にどこに置いたらよいものかという確信がありません。
能楽堂ならば真ん中にキザハシがあって目印になるのですがそれもありません。
前後に関してはもう少し前ではと思いましたが、わずかに動かした程度でもっとぐっと前に出せなかったのは絶対の自信がなかったからだと思います。
案の定、後見が出直して位置を直すと言う事態に。
急なこととはいえ、一度申し合わせでその場所を見ているはず。
意識が低かったというほかありません。
そのほか中入での着替えももう少し装束の知識があれば役に立てるのにということもありました。

終わったあと師匠に「どうしたの?」ときかれ、つい言い訳がましいことを言ってしまいました。
自分の心の弱さを見たようで、しゃべりながら自己嫌悪に苛まれていました。


今後しばらくこの「石橋」が続きます。
もう悔しい思いはしないように、今日のことはしっかり肝に銘じておきたいと思います。
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  1. 2006/05/28(日) 01:42:57|
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