2日目は師匠の「井筒」。
天候は危なかったものの、今度はクセを入れての上演でした。
やっぱり井筒はクセを謡っておかないと。
居グセ(舞グセに対してシテはじっとしたまま謡を聞かせる演出方法)でもあり、業平と紀有常の娘とが結ばれるいきさつを語るこの部分は、この曲最大の聞かせどころでもあるのです。
やっぱりクリ・サシ・クセを抜いていきなり“げにや古りにし物語。聞けば妙なる有様の~…”だと、意味が通じなくなっちゃいますしね。
「井筒」という曲は本三番目物を代表する非常に難しい曲ではありますが、「伊勢物語」の有名な箇所を取り上げたなじみのあるストーリーである上、雰囲気が非常によいため薪能などイベント的な催しでもよくとりあげられます。
そのまま上演すると確実に1時間半を超えてしまうため、だいたい短縮型で上演となってしまうのが実情ですが、やはり薪能の雰囲気にはよく合います。
一番の見せ場である“業平の面影”と業平の形見の衣装をまとった自分の姿を井戸の水面に映す場面。
動きが止まり音のない空間に包まれる…。
静寂の雄弁さというか、これこそが能の醍醐味ではないでしょうか。
さて鎌倉薪能は一曲が金春流、もう一曲は他流の能が演じられます。
今年は「是界」で観世流(観世流は「善界」と表記)と喜多流でした。
初日の観世流は銕仙会の方だったのですが前場に面(怪士?)に黒頭といういでたちでした。
この曲は7月にツレを勤めたこともあり両日ともじっくり拝見させていただきました。
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